弓道部員の本分は、弓を引くことだ。しかし「部」という組織である以上、誰かが、必要な役割を果たさなければ、円滑な運営は望めない。
二回生ながら、陰に陽に部を支える彼の心の思いを掬う。
「一回生の時は、なんだかボーッとしていたというか、表舞台に立つというよりは、先輩の邪魔にならないようにしなきゃと思っていました」。
部のルールを守り、それに違反しなければ怒られなくて済むから。そんな気持ちで日々を過ごした。
役職についてからはその生活は一変した。春先、二つの役職についた彼は、新入生の指導、日々の財務処理に追われ多忙を極めた。
他の人とは違い、自分だけがやる仕事が増え、些細なことでも苛立ちの原因になった。
裏方の仕事の辛さをなかなか理解してもらえないこともしばしばあった。「どうして俺だけ」。
苦悩は深まるばかりだった。
自分が頑張っていると思ったとしても、必ずしも周りが気づいてくれるとは限らない。
彼自身が身をもってそのことを知ったからこそ、彼は人の気持ちを大事にして寄り添うことができるのだろう。
一人の弓取る者としても日々の悩みは尽きない。マラソンに例えるならば、「今はずっと後ろの方を走っていますが、これから追い上げていきたいです」と意気込む。
昨年の試合では、途中交代で出場して3中を出すなど信頼できる控えとしての役割を果たした。
今年はスタメンでの活躍が叶うよう見守っていきたい。